夕映え
空は曼荼羅。夏になってもこれくらいの気温ならばいいのに。
電車に乗っている人は皆死んだ目で毅然とした態度。
今日は珍しく冷蔵庫に肉が入っている。固く冷たい扉を開くとそこに未調理の肉が見える。生々しく赤く頼りなく柔らかな剥き出しの肉。
肉を内包している物体って、もはやそれはひとつの、美しく不気味な生命だと言えるのではないだろうか。そも、肉の入った箱と碌なものが詰まってない自分と、一体どれほどの違いがあろうか。むしろ誰かに美味しく食べられる分、まだ肉の方が上等ってやつだ。
東京の夜。室内といえどまだ薄手のパーカーでは少し寒くて、一人っきりの狭い部屋。その片隅で紋章のように身じろぎもせずただそこにある命。その優しい存在感は片時の間孤独を紛らせてくれるけれど、知らない人がいるみたいで居心地の悪さに胸が軋む。
空っぽなのは頭だけではなくて、それがどれほど自分を憂鬱にさせるか君はまだ知ったことがない。