HOOK

今日も太陽が明朗に微笑んでいて、それを避けるように逃げるように、後ろめたい気持ちで目を伏せ地下鉄に向かう。早く太陽も自分で選べる時代が来るといい。

地下鉄の車内。途中の駅で、こちらが詰めれば詰める分だけ大股を開いて座席を侵略してくるタイプの人間がなんと両隣に座ってきて、このまま自分はどこまでも小さくなっていっていずれ消滅してしまうのかと思ったし、どうせならいっそ早く消滅してしまいたかった。

命からがら、地上に這い出す。無表情で突っ立っている自動販売機、缶コーヒーを買う。取り出した缶の表面には決して無視できない大きな凹み。補充する人が一度思い切り落としたのだろう。忌々しい気持ちでプルタブを引いて喉に流し込む。その時、握る親指に缶の凹みがジャストフィット。電流が走ったかのように、感情が微振動を起こす。

凹凸があるから重なり合えるのだ。フックがあるから繋がれるのだ。知っていたはずなのに、いつからか他人事だと思っていたな。理解することもされることも最初っから諦めて、いつも当たり障りのない球体の言葉で茶を濁すばかりの自分と目が合った。それは、名前の知らない虫だった。全部上の空だった。空はひどく青かった。どこまでも深かくて。

 

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