1009

十月。遂にようやく肉体性に支配された夏が終わり、人も街もすっかり秋めいて、何でもかんでも煌めいて謎めいて見えるあんばい。

夜になっても空気にはずっと夜明け際の菫色が微かに残っていて、長袖のシャツを一枚羽織るくらいではもう少しだけ肌寒くて……良い!日本には四季があるから素晴らしい。というのが通説であるが、個人的には二季でいい。秋と冬だけ。それでいい。二季を、さもなくば死を。とそう希うが我々はどうあれ社会という共同体の中を蠢く流動体であって、変えられるものだけを変えて、生きていくしかないのだな。いつまでも。誰だって他人に大切なことを変えられたくはないものな。それならばせめてこの束の間の感情や体温が痣になって長く残ればいいのにブリキの体は冷たくて、空洞の音だけが薄月の夜に響くのでした。

 

www.youtube.com