博物

博物蒐集家の応接間に行ってきた。

書店の8階、イベントスペースに所狭しと陳列された用途不明の器具や怪しげなオブジェに非常に胸が高鳴った。まるで稲垣足穂の短編の世界に足を踏み入れたような感覚。薄明りと埃の匂い。

購入したいものは山ほどあったのだけれど、やはりどれもいいお値段であって、無理して何点か買ったところで今の自分には焼け石に水だと諦めた。欲しいのは一つや二つの小物じゃなくて、あの部屋の空気だった。

掲示されていたポスターか何かに『中世の貴族趣味の応接間のような』というコンセプトが書かれていて「自分の欲しいものは貴族趣味だったのか」と、一気に遠ざかったような、なんとなく落ち着かないような気持ちになったが、帰りのエレベーター内で再び掲示されていたポスターをよく見てみると『剥製・標本・天文・医学・オブジェ・博物図版・宗教アンティーク』という単語の羅列があって「やっぱり足穂やん」と嬉しくなった。

けど、多分違うな。普通に購入してる人を見て、「貴族やん」と思ったものな。

 


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