3月

午前休して病院に行く。

元々貧血気味で採血が非常に苦手だ。病院出てからしんどくなってたら世話無い。

平日の午前中だというのに人人人でごった返す病院近くの繁華街。行き交う人を躱して歩く、急ぎ足では汗ばむほどの春の陽気。照り返し、多い体温。ふらつく頭では逆に清々しく感じる。なんとなく期待して上司に電話をかけるものの「午後からよろしく」とのこと。

軽く昼食を済ませてから向かおうと、駅まで向かう道すがらファストフードを覗いて歩くももどこもかしこも長蛇の列。少しまわり道して、知ってはいたが入ったことのなかった喫茶店へ。これが大当たり。敷居が高すぎずチープ過ぎず居心地がよく、そこかしこに店主のこだわりが見え、単純に旨い。ここに来れてよかった。しかし近場の大当たりは逆に辛い。何故今までここに来なかったのかという後悔。一体どれだけ無駄な時間を過ごしてきたのか。世の中に無駄なものなんて何一つないと思って生きていたけれど本当はあるんだ。ここ数年の積み上げた私の全部がそれなのだ。今までの鈍色の生活にゆっくりとさよならをとなえないと何も知らないまま人生を終えてしまう。ひとしきり自分を責めたあと、満を持して電車に。

数駅乗り、 目に見えて歩きづらそうな老人が乗車してくる。席を譲ろうと立ち上がったところほぼ同時に両隣の人々も立ち上がる。一瞬の驚きと、近年稀にみる高揚感。同じものを見て同じ気持ちになることの愛しさ。仕事なんか行かずこのまま3人でお花見にでも行きたいね。待ち合わせてたみたいにね。という気分にもなるが、実際は気まずくて目も合わせず迅速に別車両へ。こういう時席が空いていても座れない。

駅を出ると唐突にやってくる貧血症状。それも今までにないほどに強大。近くのベンチにへたりこんでただ過ぎていくのを待つ。寒気と吐き気。自意識が薄くなっていく恐怖。あまりの不安に医療ミスを疑う。

貧血の自覚はずっとあったので日頃から鉄分系のサプリやドリンクを摂るようにしていたがまだ全然足りていない。午後はずっと貧血対策をぐぐりながら働くが、血を作るためにレバーを食べるのってなんというか背いてる感じがしませんか。