一月

何をやっても上手くいかなかった季節が終わって、また季節がやってきた。

相変わらず、相変わらずもいいとこみたいな生活が続いて、名前が違うだけの全く同じものたちがいつでも時間と理性をすり潰していく。

世間は緊急事態宣言がどうとやらで、短縮営業に在宅ワーク、都市を彷徨う人影もまばら。仕事が終わって会社を出たら、開いてる店がどこにも無いことに寂しい気持ちにうんとなるけれど、そういや元から飲み歩いたり誰かと出掛けて遊んだりなんて殆ど全くしてこなかったし、残業時間は減らないしで、何不自由なく暮らせてしまっている。ようやく時代が俺に追い付いてきたなどと嘯いてみるも鏡に映った目が死んでいる。同時代性が不足している。昔の曲ばかり聴いている。

過去に依存レベルで聴き溺れた曲よりも、軽く聴き流していた程度の曲の方が最近は頭の中で勝手に流れ出す生命の神秘。どっかで会ったね、またね、と分かれる。これはなんていう曲だっけ。調べれば分かりそうな気もするが何となく億劫で、そこばかり頭の中で繰り返している。

数年前にきらきらして綺麗だからとかいう馬鹿みたいな理由で買ったステンドグラス風の聖母像の小さなマグネット。袋から出だすこともなくずっとしまっていたそれを、引っ越しを機に買い換えたばかりの真っ白な冷蔵庫に引っ付けて、悪くない気分でベランダに出て煙草を吸っていたら、遠くに教会だか学校だかの大きな十字架が見えて、別にクリスチャンでも何でもないのに何だか満更でも無いような心持ちになった。という去年の夏の日記。結局書かなかったし、半年もしないうちに目の前で建設工事が始まって、もう十字架は見えなくなってしまった。

 


LOVE SPREAD - Myrtle-Wyckoff


LOVE SPREAD - Myrtle-Wyckoff


LOVE SPREAD - Myrtle-Wyckoff